兄との、初の二人旅

旅の同行者は兄です。私より4つ上、昭和18年夏の生まれです。父は生まれて半年の赤子を故郷に置いて出征したのです。兄にとっても、南の島は母子家庭にならずに済んだ感謝の島なのです、最初は単独で行こうと思っていたのでしたが、もしかして・・・と思って声かけたら、やはり思うところあったのでしょう、二つ返事で旅の同行を承知しました。父は馬鹿が付く正直者、真面目人間でしたが、兄もまた父親にそっくりです。あ、私は真面目は真面目ですが、馬鹿はつきません(笑)、そして適度に不真面目でもありますかな。
兄には私、負い目があります、申し訳ない気持ちがあります。今から50年余前のそれぞれの大学受験期、兄は東北大理学部を目指していましたが、現役で失敗、滑り止めの茨城大に入りました。一浪すればきっと念願は叶っていたでしょう、でも4年後に私の私大受験が控えていて、小学校長の安給料では一浪を断念させられ滑り止めに入った兄・・・花の季節に布団をかぶって泣いていた兄の恨み顔が脳裏にあります。茨大を出て茨城県内の山奥の中学教師になりましたが、学究の夢捨てきれずに上京、都立工業高校で講師をしながら大学院を目指します、しかし、25歳の固い頭脳では研究についていけなかったのでしょう、千葉県高校の物理教師として定年を迎えました。兄本人はけして、あの時ああしていたら、などと恨み言を言う人間ではありませんが、弟の私としては、何かとっても申し訳ない人生の岐路にたたせてしまうキッカケになった受験期だったな、と詫びています。
そんな兄との初めての二人だけ泊りがけの旅、アルコール好きな私、全く飲まない兄・・・楽しみであり、いささかギクシャクしそうな予感もあり、3泊4日の旅が始まりました。
2月17日朝、4時過ぎ、兄の家がある千葉県柏へ自宅を出ました。(つづく)